住宅市場に回復の兆しが出てきた。賃貸マンションへの投資や住宅展示場の来場者数は伸び、各種指標も上向いている。前回の消費税増税(平成26年4月)前の駆け込み需要の反動減が収まってきたところに、超低金利が追い風となった。日銀が2月に導入したマイナス金利政策で勢いづく可能性もある。懸念されるのは住宅価格の高騰、消費税増税の行方だ。
「投資するのに今は良い時期だと思う」積水ハウスが21日に大阪市北区で開いた投資用賃貸マンションの見学会。参加した市内の男性(71)は、投資を増やしたいという。市内で複数の賃貸住宅を経営しているが「すでに組んでいるローンを借り換えて(返済額が)月60万~70万円安くなった」からだ。
同社は投資用の低層賃貸住宅を全国で55万戸以上展開。2~4月の3カ月の受注は、前年同期比で5%伸びた。担当者は「消費税増税がいずれあると分かっている中での低金利。引き合いは確実に増えている」と話す。
一般向けの住宅市場も動き出した。大型連休中、全国の住宅展示場の来場者数は軒並み増加。パナホームは前年比19%増、積水ハウスは戸建て住宅の展示場で3%増となった。「熊本地震の影響で九州地域で特に伸びた」という大和ハウス工業は4割近く増えた。
日銀の4月の主要銀行貸し出し動向調査によると、個人向け住宅ローンの資金需要判断指数(DI)は、前回調査(1月)のマイナス4からプラス4に大幅改善。「貸出金利の低下」「住宅投資の拡大」との理由が目立った。大手5銀行の住宅ローン金利(固定型10年)は1%を切り、みずほ銀行は5月に過去最低水準の0・80%とした。一方、3月の新設住宅着工戸数は前年同月比8・4%増の7万5744戸と3カ月連続で増加。年率換算では99万3千戸(季節調整済み)で、前回の消費税増税直前の25年度の98万7千戸を上回る勢いだ。「住宅購入は検討から契約までの期間は3カ月程度」(業界関係者)あることから、今後勢いが増すとの期待は高まる。
そんな中、懸念されるのは、住宅価格の高騰だ。例えば昨年のマンション1戸あたりの全国平均価格は、不動産経済研究所によると4618万円で、昭和48年の調査開始以来最高を更新した。人手不足に伴う人件費上昇が要因で、東北や九州の復興、東京五輪開催を背景に高止まりしそうだ。さらに来年4月に消費税増税が予定通り行われれば負担は増す。その場合、増税前の駆け込み需要が見込まれるが、増税見送りとなれば様子見に転じる人が増える可能性もある。